──答えを求めない時間が、わたしを導いてくれる
星を見上げていると、
言葉では表せない気持ちが、胸の奥でふわっと広がってくる。
何かを決めなきゃいけないとき。
正解を急ぎすぎて、心が狭くなってしまった夜──
そんなとき、星の瞬きはわたしに「急がなくていいよ」とささやいてくれる。
夜空には、数えきれない問いが浮かんでいる。
どれもすぐには答えが出ないけれど、
それでも「問いを抱くこと」そのものが、
歩いていくための静かな力になっているように思うのです。
目次
星を見ていると、言葉より先に「問い」が浮かぶ
夜空を見上げたとき、
わたしの中に最初に浮かぶのは、言葉ではなく「問い」だった。
「わたしはこのままでいいのかな」
「なぜ、涙が出そうになるんだろう」
「これから、どこへ向かうのだろうか」
星の光には、意味や説明がない。
ただ、遠くからそっと瞬いているだけ。
けれど、その沈黙の中に、わたしは導かれるような気がした。
思考ではなく、感覚で浮かぶ問い。
それは心の深いところにある「まだ形になっていない想い」なのかもしれない。
──答えを出すことよりも、
問いが浮かぶということ自体が、
「わたしの中に余白がある証」だと、星が教えてくれる。
だからわたしは今夜も、
星空の下で、何も決めずにただ「問い」を見つめていた。
なぜ夜空は、わたしたちを黙らせるのだろう?
誰かと話しているときは、つい「何かを言わなきゃ」と思ってしまう。
自分の意見、気の利いた言葉、正しさ──
それらを探して、頭の中が忙しくなる。
でも夜空の下に立つと、
その“言葉の義務”がふっと消える。
わたしは、ただ黙っていても許される。
星たちは、なにも語りかけてこない。
なのに、その沈黙は、わたしの中の騒がしさを静めてくれる。
──もしかしたら、夜空は問いかけているのではなく、
「沈黙すること」を教えてくれているのかもしれない。
問いを持つことと、言葉にすることは、きっと違う。
言葉にしない問いほど、深く残ることがある。
星が光っているだけの空に、
わたしは「黙っている自分」を許せるようになった。
星は“意味”を語らない。それでも導かれる感覚
星には、名前がついているものもある。
けれど──星そのものは、何も語らない。
どの星が“正しい”とか、
どの光が“美しい”とか、
そんな基準を星たちは持っていない。
それなのに、わたしは星を見ていると、
なぜか導かれているような気持ちになる。
意味がないはずなのに、心が動く。
それはきっと、わたしの中にある「まだ言葉にならない何か」が、
星の静けさに共鳴しているから。
“わかる”という感覚ではなく、
“感じる”という静かな頷き。
問いの意味も、人生の意味も、
その場では分からなくていい。
ただ、星を見ているその時間に、
わたしはもう「進んでいた」のかもしれない。
わたしという小さな存在が「響く」瞬間
星を見ていると、
「わたしはちっぽけだな」と思うことがある。
広い宇宙の中で、どこかの国の、ある町の、
そのまた一角にいるひとり──
なんて小さな点なのだろうと。
でも、だからこそ。
星空の下で生まれた問いが、
あまりにも静かで、あまりにも深くて、
その「響き」が、わたしという存在を確かにしてくれる。
ちいさな存在だからこそ、
その“ちいさな問い”が星に届く気がする。
答えのためじゃなく、
「ここにいる」と自分に向かって言うために、
星を見上げているのかもしれない。
わたしの中の声が、
誰にも聞かれなくても、
夜空にふわっと響いていく──
その瞬間こそが、
“わたし”を形づくっているのだと思った。
問いは、星と星の間に浮かんでいた
空には、たくさんの星がある。
でも、わたしが目を奪われるのは──
星そのものよりも、その**「あいだ」**にある静けさだった。
光と光の隙間。
言葉と沈黙の狭間。
そこに、わたしの問いはふわりと浮かんでいた。
ひとつの星ではなく、
いくつもの星の“つながり”が星座になるように、
わたしの問いも、出来事や記憶や感情の“間”に生まれる。
明確な意味を持たない場所にこそ、真の問いが宿る。
それは、答えが用意されていないからこそ、
長く、深く、わたしの中で生き続ける。
星と星のあいだに、問いがあるように──
心と心のあいだにも、言葉にできない光がある。
今夜も、わたしは空を見上げて、
その“あいだ”にそっと、問いを浮かべている。
天空と心をつなぐ“記憶の導線”
星を見ていると、
遠いはずの光が、なぜか「懐かしい」と感じることがある。
名前もつけられないその感覚は、
わたしの中にある“記憶”に触れているのかもしれない。
──たとえば、
幼いころに見上げた夜空。
誰かと黙って並んで歩いた帰り道。
涙をこらえながら見た空に浮かぶ星。
星は、その瞬間の“感情のかけら”と静かに結びついていて、
気づかぬうちに、心の深いところとつながっている。
だからわたしは、星を見上げながら問いを抱くとき、
それが過去と今をつなぐ“記憶の導線”になっていることに気づく。
問いは未来を見つめるものだけれど、
その奥には、過去からの静かな呼びかけがある。
天空と心は、
記憶という細くやわらかな糸で、
いまもずっと、結ばれている。
星を見上げることは、「わたし」を見直すこと
夜空に浮かぶ星たちは、
わたしに問いかけてくるわけでも、答えてくれるわけでもない。
それなのに、星を見上げると、
心の奥にそっと光が灯る。
それはきっと、
わたしの内側にある静かな声が、
星の沈黙に触れて「もう一度、自分と向き合ってみよう」と言ってくれているのだ。
誰かの評価でも、
世の中の正しさでもなく、
わたしがほんとうに感じていることに立ち戻る時間。
星を見上げるという行為は、
空を眺めることではなく、
「わたし」という存在をもう一度見直す静かな行為なのだと思う。
問いを抱えたままでいい。
光が遠くてもかまわない。
今ここにいるわたしが、
わたしをちゃんと感じられるのなら──
星はそれだけで、導きになってくれる。