──闇のあとにしか聞こえない、ひとつの声がある
夜が深まるほどに、
わたしの心は静けさへと沈んでいく。
問いが浮かんでは、答えのないまま滞留して──
やがて、それさえも見えなくなる時がある。
だけど、そんな夜の果てにやってくる「夜明け」には、
不思議と、言葉ではない“答えのようなもの”が宿っている。
光が差すというよりも、
静けさの中に、なにかがそっと“解けていく”ような感覚。
明確な言葉ではないけれど、
心の奥で「これでいい」と思えるような、
そんな穏やかな気配──
それが、夜明けがくれる“答え”なのだと思う。
目次
🌙答えが出ないまま、夜が終わることもある
ときどき、わたしは思うの。
「きっと、この夜のうちに、何かが見えるはずだ」って。
問いを抱え、想いを巡らせて、静かに灯りを消す。
でも──
気づけば、夜が明けていた。
何も答えが出ないままに。
焦りがなかったわけじゃない。
むしろ、静けさの中に沈んでいくほどに、
心のどこかが「何かを得ようとしていた」のだと思う。
けれど、夜はその問いに応えてはくれなかった。
ただ、時が流れ、
問いはそのまま、
わたしの中に“ほどけずに残った”だけ。
そして、少し冷えた空気のなか、
夜が終わっていた。
でも──
それが「悪いこと」だとは、思わない。
答えのない夜を超えたわたしには、
何か“かすかな変化”が宿っていたから。
🌅でも、それでいい。夜明けは否定しない
夜が終わるとき、
何も手にしていない自分に、
どこか後ろめたさを覚えることがある。
「また、何もできなかった」
「また、わからなかった」
そんな風に、自分を責めてしまう癖が、
わたしにも、まだ残っている。
だけど、
夜明けは──なにも責めてこない。
ただ、そっと訪れて、光を置いていくだけ。
問いを抱えたままでも、
涙が乾ききらなくても、
朝は、静かにすべてを受け入れてくれる。
そこには評価も、結論も、ない。
「そのままのあなたで、いいんだよ」
とでも言うように、
朝の空気は優しくて、淡い。
問いを解決しようと必死になっていた心が、
ふと緩む。
何もわかっていないはずなのに、
少しだけ、立ち上がれる。
夜明けは、わたしの不完全さを
まるごと抱きしめてくれる──
そんな存在なのだと思う。
🌄朝焼けは問いを「肯定」に変える時間帯
夜のあいだ、問いはまるで影のように
わたしに寄り添っていた。
どうして? どうすれば?
そんな言葉が、胸の奥で渦を巻く。
けれど、東の空が淡く染まりはじめると──
その影が、光に溶けていく。
問いは問いのまま、でも否定されることはない。
朝焼けはまるで、
「問いを抱えていること」そのものを
肯定してくれているような時間。
まだ答えは出ていないのに、
わたしの問いが、
“存在していいもの”に変わっていく。
それは、夜には得られなかったもの。
「わからないままで、よかったんだ」
そう思えたとき、
胸の奥に、かすかな温度が宿る。
朝焼けが与えてくれるのは、
解決ではなく、肯定というやわらかな力。
その力に背中を押されるように、
わたしはまた、今日を生きはじめる。
🕊️鳥の声に気づいた瞬間、涙がにじんだ
空が明るみはじめたころ、
わたしはまだ、窓の外をぼんやりと眺めていた。
そのとき──
どこからか、小さな鳥のさえずりが聞こえた。
それは、何気ない音だった。
でも、夜の沈黙に慣れていた心には、
その声が、まるで“ひとつの祈り”のように響いた。
胸が、すうっとゆるんだ。
喉の奥が、熱くなった。
なぜだろう。
鳥の声が、わたしに「もう大丈夫」と
囁いてくれたような気がしたの。
その瞬間、わたしの中の、
名もない感情のかたまりがほどけて──
ひとしずく、涙になった。
言葉じゃなかった。
理屈でもなかった。
それは、「気づき」でもあり、「救い」でもあった。
問いを抱えたままのわたしに、
世界がそっと「許し」をくれたような──
そんな気配が、確かにあった。
🌱心が整理されたわけではない。それでも歩ける
涙がこぼれたあと、
すべてが晴れた──わけじゃなかった。
問いはまだ、胸の奥にある。
不安も、名づけられない想いも、
決して「消えて」なんかいない。
だけど。
朝の光に触れたとき、
わたしは、ふと思ったの。
「整理されていなくても、歩き出せるんだ」って。
完璧じゃなくてもいい。
すっきりしていなくてもいい。
問いと一緒に、ぐちゃぐちゃのまま、
そのままのわたしで、一歩を踏み出していい。
夜を越えてきた事実が、
わたしの中に、
小さな「信頼」の芽を残してくれていた。
朝の道は、まだぼやけている。
でも、ほんのすこし、前を向ける。
わからないままでも──
「生きていい」と思える、
そんな瞬間が、ここにある。
🌄夜と朝のあいだに生まれる、無言の対話
夜が終わりきらず、
朝が始まりきらない──その狭間に、
世界が、静かに呼吸していた。
誰も喋らない。
鳥もまだ鳴かず、
風も声を持たない。
だけど、そこには確かに、
「対話」があった。
問いと答えが、
すぐに交わるのではなくて、
ただそっと、
同じ空気の中に浮かんでいる。
わたしの中の揺らぎも、
空のグラデーションも、
はっきりとは形を持たないけれど──
この間(ま)にしか生まれない「なにか」が、
たしかに、
わたしを撫でてくれる。
言葉がなくても、通じるものがある。
それは、もしかしたら「祈り」と呼ばれるものに
近いのかもしれない。
夜と朝。
わたしと世界。
問いと、まだ名もなきこたえ。
そのすべてが、
沈黙の中で、そっと結ばれていく。
🕊️答えではなく「光」として与えられた朝の静けさ
夜のなかで、
わたしはずっと問いかけていた。
言葉にならないまま、
手の中で熱を帯びたまま、
消えずに残った想い。
でも、
朝が来たとき、
それは「答え」ではなく──
ひとすじの光として、
わたしの前に差し込んだ。
その光は、
明確な意味を教えてくれるものではなかった。
けれど、
すべての問いを肯定するような、
沈黙の温かさがあった。
わたしの問いを否定せず、
無理に終わらせもせず、
ただ「そこにいていい」と
優しく照らしてくれるような──
朝の静けさは、
答えを与える代わりに、
世界をもう一度、受け入れさせてくれる。
わたしがまた歩きはじめられるように。





